MIGAKI Kei ミガキケイ

Best 30 Songs of 2020

音楽編

なんとなーく選んだ30曲すべてにコメント書いたらどうなるかなー、などと軽い気持ちではじめたらやたら長くなってしまい、本来ならひとつの投稿でおさめるところを分割しました。
いったい私は、忙しい年の瀬に何をやってたのでしょうか。
でもこんな年にだって素晴らしいものを生み、届けてくれたたくさんのアーティストには、これくらいしないと報いることができません。
いや、本当に報いることは、2021年もへこたれず、2022年より先も死ぬまできちんと生きること。
ありがとう2020年、よろしく2021年という気持ちで明日から頑張っていきたいです。

30. F2020 / Avenue Beat
これが2021も2022も続くとしたって、誰かが「ファック2020」と言っとくべきで、その理想的なカタチ。それこそポップ・ミュージックでしか届けられないもの。悪態つきまくってる優しい女の子って最高だと思います。

29. Whole Lotta Choppas / Sada Baby
ありがちなイキった男のしょうもないリリックと、このモゴモゴぶつぶつ呟くラップのフロウのコントラストに抱腹絶倒、目からウロコ。ナードがベッドルームで母親に聞かれないようにこっそりレコーディングした感が胸を打ちます。

28. Thos Moser / Gupi, Fraxiom & food house
2020年に生き残るパンクのオルタナティブな形。ほんもののゴミであるゴミみたいな音楽と、ゴミのようでゴミじゃないゴミみたいな音楽の違いはズバリ、「お前らのほうこそゴミだ!」という揺るぎない信念があるかないか。

27. Loner / Dehd
マジいつの時代の音楽やってんだよ、というツッコミは最初のコーラスの「あガリあガリあガリあガリ/あむファインあむファインあむファインあむファイン」で吹き飛ばされるので安心されたい。一度しか歌われないのがミソ。

26. Cascades / Denai Moore
ふーん、と思って聴いていると、残り2分くらいから色々なものが飛来し、最後の1分で別次元にいきなり吹き飛び、そして唐突に終わる、1時間半の映画を3分に圧縮したかのような、これぞ3分間の魔法。

25. For Want of Gelt / Minor Science
脳みそをマッサージすることは大変困難ですが、この「コロコロコロコロ」する音の波を聴いていると、不思議と脳みそのコリが取れたような気になる、究極のリラクゼーションミュージック。と、して聴きました。

24. Say less / Nothing
タイトルは「言葉は控えろ」、バンド名は「無」。これは神妙にならざるを得ません。めっちゃ歌ってますが。と、茶化してしまうのは、これを良いと言ってしまうのが恥ずかしいからだろうという自己分析。青春が蘇ります。

23. Strong / Sault
「強さ」とは、それぞれがそれぞれのやり方で闘いを「続ける」こと。つまり、欲望を絶えず軌道修正していくこと。一過性の燃えカスを増やすだけのSNSを中心としたインターネットを今すぐシャットダウンして踊ろう。

22. Primordial Soup / Nap Eyes
現実を見つめ、描写し、あるいは記録し、受け入れて残るのは結局この、こんがらがったフィーリングだけ。いや待って、ほんとかよ?うーん、やっぱりこんがらがったままで、おまけにロンリー。しかし「この瞬間」いつだっては輝く準備ができてるぜ。

21. Get High / Spinning Coin
ハイになることを奪われた世界にひびく「Get high」という言葉の虚しさにハッとして気づく、ハイに行っちゃってるのは「やつら」の方では?誰かが見下ろす視線をよそに、地べたで踊り続けるぼくらのアンセム。

20. Energy / Disclosure
部屋で聴いてもあまり意味のない音楽というものも確かに存在していて、この曲もミラーボールの明かりの下で踊りながら聴くべき音楽。例えば、まだ歌舞伎町のビルの上にあった頃のリキッドルームとか、などと懐かさで目眩が…。

19. Dream Machine (Total Control Remix) / Low Life
彼らの存在をまったく知らなかったのが恥ずかくて、慌ててオリジナルを聴く。こっちもそっちも感動的に良い。良すぎる。何が良いって、「まじツボなんだよね」という幼稚なことしか言えないのが恥ずかしい。

18. Describe / Perfume Genius
痛々しいほどのフラジャイルさと悲しみに宿った美しさを、無邪気に美しいと言ってもいいものかどうかは判らない。しかし、強い意志を保ち、かように美しく表現されたものは、美しいとしか言いようがいじゃないか!と、意味不明にキレるほど美しい。

17. astrid / Glaive
この世を去っていった、名もなき少年少女たちのレクイエム。astridとは、25年前のあいつであり、昨日のあの子でもあり、未来のぼくらのことでもある。去ってしまった者からすれば、それが安っぽいかどうかなんて気にならないだろう。

16. might bang, might not / Little Simz
「Fuck that, I crash the party / Fuck that, I am the party」とのこと。これはアガる。「I am one-woman army」 に偽りなし、たるんだおっさんのケツを軽やかに蹴り上げ、活を入れる。でもあんまり強く蹴らないでほしい。

15. The Black Mirror Episode / Open Mike Eagle
ブラックミラーのエピソード以上に戦慄するリリック。と同時にここにある可笑しさは、ひきつった笑いをもたらす。ストリーミングの選択画面に映る大量のサムネイルから動画を選ぶ、ブラックミラーそのものの世界に生きる皮肉。

14. Patience / Froogle
意図せず食み出してしまったことを、自虐と自嘲を交えて認め、ブツブツ文句を言いつつ、「おれっていつも間違ってばかり/まあでもやめねえけどよ」と軽やかに歌う、この風通しの良い投げやりな感じは、散歩のお供に最適です。

13. Idoru / Grimes
イーロン・マスクとグライムズ自身を重ね合わせたようにも聞こえる歌詞に赤面。でも何より、グライムズ流の2020年版オリエンタル解釈のような音がとっても良い。失敗しつつあるEUへの憧憬と、アジアの連帯への夢想を掻き立てて止みません。

12. Murder Most Foul / Bob Dylan
自分の知識量と語彙ではこの歌詞を消化しきるのは到底無理。でも、この16分間というあまりに長すぎる曲に身を委ねているだけで、自分の中に歴史があり、そしてそれが蠢いているような不思議な感覚に陥いる、壮絶な一曲。

11. Day of Show / Skullcrusher
誰だって一度は部屋でひとり膝を抱えるしかない時期があって、その時間を本人は孤独だと思うが、実は孤独とは、これじゃだめだと意を決して立ち上がった瞬間にようやく実感としておとずれるもの。その瞬間を切り取った君は偉い。

10. I Am Not Alive / Duncan Trussell

人間という入れ物に入って生き始める前のぼくらは、どこにいて、そしてどこへ行くのか。きっと、そこかしこにいて、同時にどこにもいない。生命の源である粒子として漂う、かつての生命と、これからの生命たちの歌。

9. M4 Lema / Autechre

オウテカとは、カオスをそれとして認識できるギリギリの状態で表現する天才のことだと思うが、このカオスには、声なき声を拾い届けてくれたかのような親密さがある。人の声ばかりに耳を傾けず、声なき声に耳を傾けよう。

8. Video Game / Sufjan Stevens

不機嫌を不機嫌として撒き散らすのは凡人のやること。スフィアン・スティーヴンスは不機嫌を見事にドリーミーなポップソングに仕立て上げた。これは、今や失われつつある啓蒙への意志か、はたまた催眠か。

7. Tangled Man / Green Gartside

今も変わらないこの歌声が、この2020年に届けられたということ、ただそれだけで私みたいなおっさんは満足なのです。とにかく何もせず、いつまでもこの曲だけに浸っていたい。この最低なアートワークには目を瞑って。

6. Be a Rebel / New Order

おっさんはこれを聴いて泣くが、それはおっさんだからであって、若いやつはこの曲を聴く必要は1ミリもない。だが、もし何かの間違いで聴くことがあれば、覚えておいてほしい。彼らは40年前、死んじゃったあいつの、ただのオマケだったということを。

5. goonies vs. E.T. / Run the Jewels

これより他に良い曲がアルバムにはあるけれど、RTJは私にとってドーピングなので、一番気分をぶち上げてくれたのがこの曲を選びたい。ビースティーズっぽいってのがポイントすね。気分がアガり過ぎるのが困ったところ。

4. Cut Your Hair / Walt Disco

「過去に囚われて/自分を損なってるやーん、、、髪切れ!」と、ひたすら髪を切ることを勧めてくる、ごきげんな一曲。グラム・ロックとは唯物論のこと。困った、弱った、にっちもさっちもいかん。んな時は、とりあえず髪切れ。

3. WAP / Cardi B ft. Megan Thee Stallion


論争が起きたとか起きないとかの歌詞は置いといて、ダントツにクール。ちょーカッケー。ラップとか割とどうでもいいタイプの私もこれには参った。4歳になったばかりの息子もお気に入り。でも、英語が分からなくて良かったと、純日本人であることをはじめて神に感謝しました。ちなみにオレは、どれだけ批判されようが、曲として最高なものを作ったのでそれで良い(逆にダサければアウトでオッケー)派。え?違う?

2. Life Worth Missing / Car Seat Headrest


収録のアルバムは2020年、最もよく聴いたアルバム。なんでこんなにもたくさん聴いたのだろうかと改めて考えてみると、「自分を変えよう」とする懸命な意志を嗅ぎ取り、そこに感動し、共鳴したからだろうと思う。
オレは走った。夏ごろから毎月100km。自分を変えるための、ひとつの試みとして走り続けた。「うまくいけば、年明け前には、脇腹のたるんだところもなくなっているんじゃないか」。甘かった。しかし、「顔痩せました?」と、行きつけの床屋に言われるくらいには変われたのは、この作品のおかげと言っても過言ではない。

1. Lifetime / Romy


生きてるあいだに一度だけ。訪れるものは訪れ、起きることは起こってしまう。Once in a lifetime。コーラスに歌われる、トーキング・ヘッズによる大名曲と同名のライン。よりBPMを早くし、より具体的な言葉を選ぶ。それは、普遍性やアートとしての価値よりも大事なものがあるってこと。
それはもしかしたら、今を乗り越えようとする、あなたや私のそばに、温もりをもって在る、ということ。
私たちはあまりに無力だ。きっと駄目だろう。でも、共にいれば、乗り越えられるかもしれない。そんな風に響いて胸を打つ、2020年の年の瀬。
良いお年を。

Category : ブログ
2020.12.31 Thu

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