なんと言っても猫である。
「とりあえず猫画像アップしとけばいい」という、不気味なネット上の監視者(それはあなたであり、わたしでもあるかもしれない)に怯えきった、無難な〈積極的に見える逃げの素材〉として消費されつづけている猫。
猫、もちろん君たちに罪はない。
しかしオレは、そんなふうに、実にイージーに猫画像を使うことに激しい抵抗を覚える。
Be a rebel.
ささやかだが確固とした、断固たる、放置されすぎてカチカチに固まった団子のように決意を決めた、いつかのあの日。
そんないつかのあの日のオレにソーリー、オレはとうとう猫画像を使ってしまった。
しかもこんなふうに、実にイージーに。
というわけで、猫である。
この猫(タイトル画像に映っている彼)は、緊急事態宣言真っ只中の5月8日に拾われて我が家にやってきたオス猫で、拾われた時点で獣医による推定生後2週間。
見つけた親戚の子どもたちの父親が、重い猫アレルギーだということを主な理由に親戚一家では飼うことができず(私も猫アレルギーなわけだが。。)、他にアテもないので我が家で引き取ることになった、まことに哀れな猫だ。
そんな風にしてはじまった猫のいる暮らしであるが、私もカミさんも家猫を飼った経験がなく、ミルクを飲ませることに苦労し、きちんと用をトイレで足してもらうことに苦労し、家にある物品をそのいたずらから守ることに苦労し、なんとか無事に育ってくれそうだという手応えを感じた頃には、一家全員傷だらけであった。
そう、とにかく凶暴な猫だったのです。
本当にこれが猫かと思うくらい甘えたがりな一方、一度火がつくと手がつけらられず、我が家で一番サイズの小さな息子を筆頭に、彼の牙および爪による被害に悩まされる日々。
「タマ取れば落ち着く」という、定かではないネットの情報にすがり、そして実際はタマ取っても大して変わらず、「ネットなんてやっぱり嘘しかのってねえな!」と悪態をつき、「もはや自衛するほかあるまい」と諦めはじめたここ最近になり、ようやく凶暴さに落ち着きが見えてきて、これならなんとか一緒にやっていけそうかなと、ようやく一息ついたところ。
さみしがりやの甘えたがり、抱っこされるのが大好きで「おい抱っこしてくれよ」と前足で抱っこを催促してくる、なんだか鬱陶しい変なヤツなのですが、子どもたちが姉弟喧嘩をして泣いているとやってきて、2人の涙をペロペロなめたり、私が子どもを小言を言っているとやってきて、まるで小言をやめさせようとしているかのように「マーォ」と、私に向かって何事がをつぶやいたり、妙に優しいところがあるヤツでもあります。
まあ人間である私の錯覚かもしれませんが。
マーォ。
そうこうしているうちにあっという間に年の瀬、色々と年間ベストが発表されている時期ですが、今年は特別な一年になってしまったので、各メディアのランキングもいつもとは違った趣がありますね。
というのは勘でテキトーに書いてるだけで、実際はまだどこのメディアの年間ベストも見てません。
そんなわけで、私の年間ベストはこんな感じです。
10. タイラー・レイク
9. ヴァスト・オヴ・ナイト
8. ウォッチメン(TVシリーズ)
7. All or Nothing / トッテナム・ホットスパー
6. トゥルース・シーカーズ
5. アンティ・ドナのハウス・オヴ・ジョーク
4. ラヴ・クラフト・カントリー
3. 1917
2. マンク
1. フォードvフェラーリ
「1917」は年の瀬にようやくTVで観ただけ、ほかに映画館で観れたのは、テネットとパラサイトのみ。
映画に関しては本当に寂しい1年になってしまいました。
しかしなんといっても、「フォードvフェラーリ」。
父親が息子にコースの説明をする場面をきちんと劇場で観ることができたのは、決して多くはないぼくの映画体験の中でもベスト3に入るものに。
思い返すだけで震えます。
他に特筆すべきは、5.のエピソード1冒頭にぶちかまされる「Everything is Drum」。
試しに子どもたちに観せて(聞かせて)みたところ、字幕なんてろくに読めもしないのに大爆笑しており、深く感動した次第であります。(何が)
10. 押井守のニッポン人って誰だ!?/押井守
9. 雨の日はお化けがいるから/諸星大二郎
8. 死者の民主主義/畑中章宏
7. 時間は存在しない/カルロ・ロヴェッリ
6. 猫楠/水木しげる
5. 銀河ヒッチハイク・ガイド/ダグラス・アダムス
4. 影の現象学/河合隼雄
3. V./トマス・ピンチョン
2. ゲンロン11/東浩紀ほか
1. 戦う操縦士/サン=テグジュペリ
今年は読んだ本のベストも記録しておこうと思います。
積ん読が10冊くらい溜まっているところに、義兄の要らない本ストックから新たに20冊くらい仕入れる愚行を犯した直後でもあり、なんだかなーという感じですが、やっぱり本を読むのは楽しいものです。
私にとって、読書というものはリアルタイムのものを追いかける行為とはまた別の体験なので、2020に読んだものベストということになりますが、生きている人間に限って言うと、やはり同時代に東浩紀がいてくれるということ、しかも彼がアカデミックの象牙の塔に閉じこもるでも、熱狂の渦の中にいるのでもなく、私たちと同じ地平から言葉を紡ぎ続けてくれていることに、深く感謝したいところであります。(誰に)